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WAZAtoBA設立者の想い(1)寺内ユミ

日本の良いものを海外に届ける「技」と「場」を

もともと私は、店舗のクリエィティブディレクションや、プロダクトデザインなどに長く関わっていました。20年前に、日本の美しいものをコンテンポラリーに編集したショップにクリエイティブディレクターとして携わり、10年ほど前から改めて、日本の良いものをもっと世界に出していきたいと思い始めました。日本には、技術や素材が優れたものがたくさんあるのに、海外での評価や地位はまだ高いとは言えません。

行灯の技術を活かした、コンテンポラリーな
デザインの照明

世界に通用する日本の素材を使ったデザインを目指して、行灯の技術を活かした、コンテンポラリーなデザインの照明を作ったこともあります。

生まれは佐賀で、25歳の時から東京に住んでいます。昔は佐賀を離れたかったのに、今はその良さが分かってきて、よく帰るようになりました。新しい視線で佐賀県の魅力を発見するサイト、「さがごこち」のナビゲーターもしています。

佐賀で好きな情景を、いろいろと紹介しています。私の場合、普段、デザインのアイデア、ヒントになるのは情景だったりします。デザインは特別な体験から生まれるというわけでもなく、ささやかな日常から生まれることも多いと考えています。

金具を使わない一体化型の化粧筆
「SHAQUDA(シャクダ)」

金具を使わない一体化型の化粧筆「SHAQUDA(シャクダ)」を作った時、そのコンセプトは「けしきをみたす」ことでした。それがあることによって、周りの空気、自分の心までも満たしてくれるモノづくりを創り出したプロダクトです。使ってみて、触ってみて良く、置いてある佇まいも良い。展開する17本全てを並べてみると、ブラシの上部がぴったりと整然に並びます。

ブラシを使う瞬間、その本人が景色の一部になるとすれば、その所作も美しいものであってほしいと願っています。


大堀相馬焼との出会い

WAZAtoBAの現代表理事の松永とは2013年に出会い、そこで震災復興プロジェクトのことを知りました。300年の伝統を持ちながら、震災によって大きな打撃を受けた福島県の大堀相馬焼を支援するものです。震災から数年経ち、人々の記憶も薄れつつありましたが、デザイナーとして少しでもお役に立つならと、参加しました。

KACHI-UMAプロジェクトで生まれた10種類の湯飲み

初めて大堀相馬焼を見た時は、正直言ってあまり興味がわかず、これを現代に生かすのはかなりハードルが高いなあと思いました(笑)。コンテンポラリーの感覚から離れており、伝統色が濃かったので…

しかし、二重焼きや青ひび、右に出るものがいないという縁起の良い左馬は、魅力もありました。そこで、ただ自分がやるだけでなく、10人のデザイナーによる多様なデザインを、湯飲みに絞って作ることにしました。2014年が午年だったので「勝ち馬」のテーマにするべく、時間がない中、皆さん非常に協力して、良い商品ができました。資金は松永の提案でクラウドファンディングを利用し、2か月で80人から目標額130万円を集めることができました。その後、百貨店や専門店でも販売する機会が得られるなど、一定の成果が得られました。

より広い支援を目指して プロジェクトを進める中で、日本の伝統工芸や地方産品をもっと魅力的に伝えるために、一企業の活動ではなく、広く多様な活動を支援する一般社団法人をつくろうという話が出てきました。新しい価値を生むには、「技」と「場」が大切という思いがあり、法人名は「WAZAtoBA」と決め、ロゴも2015年に私がデザインしました。

WAZAtoBAのロゴ。toは技と場をつなぐプラスの+も表している
3種類の酒器の形が、3つの味わいになるIKKON

第一号プロデュース作品 IKKON 社団法人設立の準備をしつつ、WAZAtoBAのプロデュース第一号として、酒器を作ることになりました。相馬焼の持つ二重焼きの構造を活かして、ユニークなものができないかと、酒造メーカーにも訪問して案を練りました。2016年の年末、二重焼きの構造を使った形状で、外側が熱くなりすぎるお燗器を持つことができ、スマートな熱燗の提案ができる、そして、一見外からは内側の形状が分からない面白いぐいのみが作れる、とひらめき、私から松永に提案して製作が始まりました。

この時は、3Dプリンターで試作品を作り、製作期間を半減することができました。2017年に販売を開始しましたが、予約3か月待ちの人気商品となっています。

寺内ユミ

一般社団法人WAZAtoBAは、2017年5月に無事設立できました。この社団法人の場を活用しながら、伝統工芸や地方産品の技術を活かし、日本の良いものを海外に出していきたいと考えています。

夢は、日本の素敵なものを広めること、日本を認めてもらうこと。まだまだヨーロッパと比べて対等になっている感じがないので、渡り合っていけるようになりたいです。